2014年07月22日

密室の帝王がお通りだ!『三つの棺』その他

先日のKindle廃課金者の集まりに向かった途中の紀伊國屋でミステリの棚を見ていたらびっくり!
なんとディクスン・カーの「テニスコートの謎」が新訳で登場! タイトルも一新して「テニスコートの殺人」です! (微妙な変更!)
しかし、なぜこの怪作がわざわざ新訳に?

いや、わたしはこの作品、とても好きです。

いつか書いたかもしれませんが(そしてこれから何度でも書くかもしれませんが)初めて読んだカーの作品は商店街の外れにある古本屋で見つけた「赤後家の殺人」でした。(こちらは出版社との契約の都合でカーター・ディクスン名義の作品ですが)
その古い屋敷では以前から『その部屋で一夜を過ごした者は必ず死を迎える』という言い伝えのある部屋がありました。実際に過去四人の人間が謎の死を遂げています。数人の人達が面白がって、皆が唯一の出入り口である扉を隣の部屋で見張っているから、誰か一人、夜明けまで中にいるというのはどうだという話になります。

そして、一人の男が中へ入り、外からは15分ごとに呼びかけます。
が、返事がなくなり、鍵のかかった扉を打ち破って中へ入ると、既に……

ああ、とにかくスゴイ謎なのです。そして、いまから考えればそりゃないよというトリックですが、とにかく謎の出し方が魅力的だったので、もう解決が少しぐらいしょぼくても何の問題もない! そんなことを思わされてしまうほどの魅力でした。

わたしが持っていた東京創元社の文庫カタログには『密室の帝王』として紹介されていたカーの、あまりに偏ったミステリとの出会い。まだ若かったわたしはすっかり夢中になってしまったのでした。

二作目に読んだのが、片田舎の本屋に数冊あったカーの作品紹介を読み比べ、迷いに迷って選んだ「テニスコートの謎」でした。

雨上がりのテニスコートの真ん中にはスカーフで首を絞められた死体が一つ。
足跡は被害者のものと第一発見者のものしかない状態。
第一発見者である女性は窮地に立たされることになります。(そりゃそうだ)

さあ、魅力的な謎ではありませんか!
これは不可能犯罪モノではよくある「足跡のない殺人」の亜流テーマです。もしも、第一発見者が犯人ではないとしたら、真犯人はどうやってテニスコートの真ん中にいる被害者の首を絞めることができたのか?

はい、読んでビックリのとんでもないトリックが飛び出します。この太ったおっさん(名探偵ギデオン・フェル博士)は何を言い出すのかと呆気にとられること必至。

でも、当時のわたしはしびれました。風変わりなトリックだけど、なんて魅力的な謎の見せ方だろうか!
こうしてますます不可能犯罪が乱れ飛ぶ、ディクスン・カーの世界へと引き込まれていくのです。

で、この期に及んで、色々とカーの新訳が出ておるのです。
超名作である火刑法廷は、まあ当然でしょう。帽子収集狂事件もまあ、江戸川乱歩がべた褒めしたというところで日本では受けが良かったという歴史もあるのかも。「夜歩く」もカーの記念すべきデビュー作です。
それ以外では、なぜこれを……という気がするのも確かです。これ、誰が買うの?
オレか? まあ、買ってますよ……でも夜歩くは新訳も旧訳も読んでないよ……

そうは言ってもここへきてついに名作「三つの棺」が新訳に!
これは買わなければ!
もう魔術的としか言いようのない不可思議な事件が雪のロンドンで起こります。

その不可思議な二大不可能犯罪がフェル博士の手によって収束するシーンではあまりのすごさにため息がでました。
ミステリ作家はここまでやってしまうのです!

というわけで、本日はだらだらとカーの新訳が出てどうでしょうか&どうしようかという内容でお届けしました。

それはそうと、二階堂黎人氏の「吸血の家」は、上記の「テニスコートの謎」と同様の不可能事件が提示され、カーとは全く異なる、素晴らしく独創的なトリックが光りまくった名作です。
……と思ったら絶版かよ! 二階堂蘭子の新作出して復活&復刊してください!

赤後家の殺人



テニスコートの殺人


三つの棺

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