2015年07月26日

新訳出てました『ユダの窓』

『ユダの窓』の新訳が出ていました。
うーむ……買うべきか買わざるべきか。

かつてディクスン・カーはわたしが最も好きな作家でした。
いまでも本棚の一番上の棚はカーの本が並んでいます。

まあ、名作です。
このブログでも過去に紹介していると思いますが。

結婚を許してもらおうと、恋人の父親ヒューム氏の家を訪れた青年ジェームズ・アンズウェル。しかし、部屋に通された後で気を失ってしまう。
目を覚ますと、部屋の中には胸に矢が刺さったヒューム氏の死体が。部屋には他の人間はおらず、窓にもドアにも鍵が掛かっていた。
そして、彼は殺人罪で逮捕されてしまう……

絶望的な状況におかれたジェームズの弁護に乗り出したのは我等がヘンリィ・メリヴェル卿。
彼はこの殺人事件には他に犯人がおり、そいつは『ユダの窓』を使って被害者を殺したと主張する。


というようなオハナシでございますよ。
カッコ良すぎる。
密室の帝王であるディクスン・カーが辿り着いた究極のトリック。もはやワビサビの世界かと。

で、珍しく二回読んでいるというぐらい好きなのですが、そこへきてこの新訳ですよ。
むー。
座談会が載っているわけですよ。

ジョン・ディクスン・カーの魅力=瀬戸川猛資、鏡明、北村薫、斎藤嘉久、戸川安宣(司会)


これは読みたい!
このためだけに買っても損はない!

しかしなあ……もう紙の本で小説は買わないと決めているのに……
ハヤカワから出ている三つの棺はKindle版があるのです。

東京創元社も頑張っていただきたい。



posted by Red56 at 02:20| Comment(0) | オススメ密室ミステリ

2014年08月26日

ブラウン神父の存在こそが奇跡『ムーン・クレサントの奇跡』

密室ものの名作を紹介しているシリーズ第三弾です。
これ、ちゃんとお互いをリンクで結ぶべきですよねえ……

下の部分にリンクを貼っておきます。

さて、第三弾はブラウン神父ものの一つ『ムーン・クレサントの奇跡』でございます。
ブラウン神父が活躍する短編集のシリーズ第三弾である『ブラウン神父の不信』に収録されております。

ムーン・クレサントと呼ばれる三日月型のビルの最上階から姿を消した男。
その後、意外なところで発見されます。

読み直そうと思ったけど、読みにくいのでやめました!
なので詳細は一切忘れています!
誰か新訳を!
個人的には田口俊樹さまを希望!

とにかくトリックが仰天。だけどわかりやすい。なるほど、確かにそうなればそうできるかも。
などと思ったらもう作者の術中に。
いやあ、力業だけど、小技がいろいろと効いていて、実に丁寧。
要するにアレです。
美しいミステリなのですよ。

この『不信』にはもう一つ優れた密室ものの『犬のお告げ』が収録されています。
巻頭の紹介ではブラウン神父の作品の中でも一番のできだそうです。
まあ、もちろんこの作品、隙のない傑作(とにかく犬が……)ですが、わたしの中では一巻の『ブラウン神父の童心』に収録された『折れた剣』が神がかり的な出来だと思っています。
と、前にも書いたけど、もう何度でも書きますよ。

『折れた剣』は密室でもなければ不可能犯罪ものでもないのです。それどころか単なる当たり前の理屈の連鎖です。
しかし、その連鎖がとんでもないところへとたどり着くのです。

いま、その理屈の始まる一文を記載したのですが、やめます。
ネットでこの一文をググると一気にタネあかしまで紹介されていることが多いようです。
ここは、できるだけ真っ白な状態で読んでいただきたい。

作者ギルバート・キース・チェスタートンは知の巨人として知られた人でしたが、天才がその才能と稚気を見事にブレンドしてこの奇跡的な短編集を書き上げました。
嬉しいことです。

『古書の呪い』や『通路の人影』なども忘れがたい作品。
まあ、傑作揃いですが、密室もの、というくくりではこの『ムーン・クレサントの奇跡』が一番印象深いのであります。
わたしの大好きな島田荘司先生のとある短編の源流であると、思いませんか?

とまあ、名作揃いですが、やっぱり読みにくいので、新しい訳が望まれるところです。

下記にリンクを貼っておきます。表紙は最近新しくなりましたが、訳は古いままです。
残念ながらKindle版はありません。紙の本です。
読む場合は『童心』から順番にどうぞ。











これまでのオススメ密室ミステリ
密室ミステリであればまずはこれを『黄色い部屋の謎』
奇跡的な傑作『妖魔の森の家』

posted by Red56 at 01:46| Comment(0) | オススメ密室ミステリ

2014年08月12日

奇跡的な傑作『妖魔の森の家』

「オススメ密室ミステリ」シリーズの第二回です。

一回で終わりになるかと思われましたが、なんとか覚えておりました。

今回はいつも(二回目ですが)と趣向を変えて密室ものの短編をいくつかご紹介したいと思います。

密室。鍵の掛かった部屋の中に死体が転がっている。
この不自然なシチュエイションを成立させるために、不自然な話になってしまうことも多々あります。

が、長編で詳細を説明すると「?」な状況であっても、短編でさらりと流してしまえば、細かいことには触れずに見事なトリックの切れ味を堪能できる、ということもあるわけです。

さて、前置きはこの程度で、短編ミステリの傑作をご紹介いたします。

「妖魔の森の家」1947 創元推理文庫「カー短編集 2」収録

はい。まずは多くの人が迷わず認める、密室の帝王ディクスン・カーの傑作をオススメしたいと思います。

かつて「妖魔の森」と呼ばれる森の別荘でヴィッキー・アダムスという少女が姿を消す事件があった。
鍵の掛かった寝室から消え失せた少女は一週間後、何事もなかったように寝室のベッドで眠っているところを発見される。

20年後、名探偵ヘンリー・メリヴェル卿はとある男女にピクニックに同行するように頼まれる。
その男女はヴィッキーと、あの別荘へと向かうというのだ。
ヴィッキーは別荘に着くなり謎めいた言葉を口にした。
「かりにわたしがまた姿を消しても、驚かないでね」

そして、ヘンリー卿の目の前でまた再び……


文庫巻末の中島河太郎氏の解説によれば、本作はエラリー・クイーンが「推理小説の理論と実際の、ほとんど完全な作品」であると称賛したそうです。

まあ、その通りです。
カーの作品の中でもその完成度の高さは驚くべきものです。

さすがにこの短編集はまだ入手可能なようです。
あ、今回内容を確認しようとしたら、手元に現在の表紙の版がないことが判明。これ、おそらく人に貸したまま戻ってきていないようです。
もう取り戻すのは難しいぞ……古い表紙のものはあるのですが……買い直そうかどうしようか迷っています。





ちなみに、この短編集にはわたしがカーの中でもかなりお気に入りの傑作「第三の銃弾」が収録されています。
が、この短編集のやつはクイーンが雑誌掲載用にばっさりと短くしたやつなのです。
近年になってようやく完全版がハヤカワから出されたので、興味を持たれた方はそちらを是非。

既にこのブログでもご紹介したかと思いますが、このオススメ密室ミステリのシリーズで再度取り上げるかもしれません。(重複なんか怖くない!)

……と思ったら、近年出た完全版の方が新刊では入手不可に……どういうことやねん!


ああ、短編なのに一作の紹介で終わってしまった……
posted by Red56 at 01:24| Comment(0) | オススメ密室ミステリ

2014年08月08日

密室ミステリであればまずはこれを『黄色い部屋の謎』

うわー、どうした。ここ数日、PV(ページビュー。閲覧数です)がじわじわと増加してます。
今日は200を超えそうです。

まあ、以前もそういうことがありましたが、無事に沈下して100前後になりました。
今回もそういうことかと。

とりあえず、モバイル版にGoogleのAdsenseを貼りましたが、いかがでしょうか。
……迷惑ですか?
……どうせクリック数はアレなんで、外しても痛くもかゆくも丸くもないので、全然いいんですよ。
ただちょっと悲しいだけ。ちょっとぐらい悲しくったって、人はたいてい生きていけるんだ。

さて、本日から新しいエントリとして「オススメ密室ミステリ」を開始します。
できればシリーズとして続けていきたいと思います。

さて、記念すべき第一回は……
黄色い部屋の謎です!


これを外すことはできません。
密室ミステリって何?
という人に最初に読んでいただきたい。
できれば高校生ぐらいでクリアしていただきたい作品です。

なぜなら、探偵役のルール・タビーユ君が若干18歳でこの難事件を解く、ということもありますが、
・素晴らしい密室トリック
・廊下での鮮やかな人物消失トリック
・意外な犯人
その全てがいま読むと「なんじゃそりゃ」的な扱いを受けかねないのです。
闇雲にスゴイことを言い放つタビーユ君にしびれるには若さが必要かと。

まあ、wikipediaによれば書かれたのが1907年。100年以上前です。
その頃には当然すさまじい反響だったようですが、そこからのミステリの発展がありますから。
まだミステリずれをしていないうちに読むべき傑作です。

わたしも、高校の頃に読んでいたく感銘を受けました。
で、その頃に国語の先生が授業で「人前で三分以上のスピーチ」を実施していたのですが、クラス全員に順番で回ってくるわけです。
テーマは何でも良かったと記憶しております。
わたしはこの「黄色い部屋の謎」の密室事件発生時の様子を教壇で10分ほど熱演したものです。

高校から引っ越した先の田舎の学校だったので、あまり親しい友達もできない状況でしたが、まあ、いま風に言うなら「痛い奴」の先駆であったのだなあと、いまとなっては血の涙を流しながら微笑んで振り返ることのできる過去です。

この作者の作品で一般的に知られているのは「オペラ座の怪人」でしょう。
だけど、ミステリ好きには「オペラ座」を読んだことはないけど「黄色い部屋」はもちろん読んでますよ!
というやや歪んだチョイスを誇らしげに語る人もいることでしょう。そう、わたしですよ。

密室とはなにか。

鍵のかかった部屋の中に横たわる他殺死体。
しかし、そこに犯人の姿はない。

これが基本スペック。
普通に考えたら「そりゃあ、無理じゃろ」となります。

そうなんですよ。無理なんです。そんなことは不可能です。
ところが、その不可能が鮮やかな推理によって合理的に解き明かされる。

その時の驚き。その爽快感。

総じてミステリというのは不自然なものです。
事件が起こり、調査が行われ、犯人が明らかになる。

これだけのあらすじを延々と追い続けている形式の文学。
それが延々と続いており、愛されている理由はただ一つ。

新しい驚きがここにあります。という作者の気概。その結果生まれる作品の美しさです。

もちろん、全てのミステリが傑作というわけではありません。

低調な作品が腐るほどあり、その中に大きな輝きを放つものが点在するという状況は、マンガや他のジャンルと何ら変わりはないでしょう。

それだからこそ「ミステリ小説」に興味を持ち、中でも「密室」に惹かれたという人に対する道標が必要かと思い、安いワインを飲みながらこんな駄文を書いてみました。

さあ、きっとこのシリーズが始まったことによりでPVもまた落ち着くに違いない!

黄色い部屋の謎

posted by Red56 at 00:43| Comment(0) | オススメ密室ミステリ